フロントリテイリングは14日、松坂屋上野店(東京都台東区)の南館を建て替えた

.フロントリテイリングは14日、松坂屋上野店(東京都台東区)の南館を建て替えた複合施設「上野フロンティアタワー」を11月4日に開業すると発表した。子会社でファッションビルを展開するパルコや、TOHOシネマズの映画館が入り、上層階は賃貸オフィスとなる。銀座で4月開業した「GINZA SIX(ギンザシックス)」に続き、賃料収入を柱とする“脱百貨店”の事業モデルを鮮明に打ち出す。

 フロンティアタワーは、1957年完成の旧南館跡に3年かけ建設した。地上23階建て地下2階、延べ床面積約4万1000平方メートルで、百貨店フロアは本館と接続する地下1階のみ。地上1~6階にパルコ、7~10階に8スクリーンの映画館が入る。12~22階のオフィススペースは既に満室という。

http://mixpaper.jp/scr/book_detail.php?id=59ba4be286163
http://mixpaper.jp/scr/book_detail.php?id=59ba4c47da8fc

 旧セゾングループの一員だったパルコは、5年前にJフロント傘下に入って以来、初の大型出店となる。上野では主に30~50歳代を狙うが、顧客の年齢層が比較的高い松坂屋と、若者向けの「とがった」ブランドを売りとするパルコの組み合わせによって相乗効果を生み出せるかが試金石となる。

 映画館の“空白地帯”となって久しい上野にTOHOが再進出することで、東京東部に新たな人の流れを作れるかも注目される。

 Jフロントが、百貨店から専門店の集まる複合施設へとかじを切るのは、自前で売り場を作る旧来の事業モデルでは成長が難しいためだ。昨年の全国百貨店売上高は6兆円を割り込み、ピークだった91年と比べ約4割も縮小している。

 このため百貨店業界では、高島屋が新宿店(渋谷区)や立川店(立川市)に家具・雑貨専門店のニトリを誘致し、三越伊勢丹ホールディングスもショッピングセンター事業を計画するなど、保有する不動産や店舗の運営手法を見直す動きが相次いでいる。

 Jフロントは現在、渋谷パルコ(渋谷区)と大丸心斎橋店新本館(大阪市中央区)の建て替えも進めており、山本良一社長は「百貨店の延長線上でない『非連続な成長』に挑む」と同日の会見で述べた。(山沢義徳)