金融とITを融合した新サービス「フィンテック」を取り入れるため

 金融とITを融合した新サービス「フィンテック」を取り入れるため、国内銀行が新会社を設立したり、ベンチャー企業と手を組んだりする動きが加速している。異業種でIT大手の米アップルやグーグルが銀行の“専売特許”だった決済サービスに乗り出しており、存在意義が揺らぎかねないとの危機感を持っているためだ。ただ、根強い「現金主義」と日銀の「マイナス金利政策」によりサービスの差別化が難しくなっていることで、思うように普及が進むかは見通せない。

 ◆現金主義が普及の壁

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 「フィンテックは金融ビジネスを大きく変えるドライバー。うまく活用すれば効率的に事業拡大できる」。全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は14日の定例会見で、こう期待を寄せた。

 傘下の三菱東京UFJ銀行はシリコンバレーに人材を派遣しているほか、フィンテックの研究や開発をする新会社を今秋に設立。決済の迅速化やコスト削減につながる技術開発などを素早く進める狙いから、銀行と別組織とするなど矢継ぎ早に手を打ち始めている。

 7月には携帯電話番号とメールアドレスを入力するだけで、通販サイトから衣料品などを購入できるオンライン決済サービス「Paidy(ペイディー)」を手掛けるベンチャー企業に出資。「多様化する決済手段の一つとして根付く可能性もある」との判断からでITを活用した独自の仮想通貨「MUFGコイン」の開発も同時並行で進めている。

http://www.pokersns.jp/diary/34478
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 他のメガバンクも同様に対応を急いでいる。みずほフィナンシャルグループ(FG)は人工知能(AI)やビッグデータを活用した事務作業自動化のためのソフトウエア開発、決済プラットフォームの構築などを目指す新会社「ブルーラボ」を6月に設立。三井住友FGも、指紋や顔などの生体情報を本人確認に使い安全で手軽にインターネットバンキングで取引できる技術や、AIでクレジットカードの不正利用を検出する仕組みなどの開発を強化している。

 3メガバンクが相次ぎ、フィンテック事業への投資を強めるのは、ベンチャー企業や欧米の金融機関の後塵(こうじん)を拝しているためだ。海外では、オンライン上で資金を供給する投資家と資金が必要な借り手とを結び付けて融資を仲介する金融サービスなど新たな事業モデルが確立。既に日本勢は周回遅れともいわれる。3メガバンクは、IT関連企業との連携拠点を設けるなど挽回したい考えだ。

 3メガバンクフィンテックに力を入れる中で、日本での普及の鍵は「現金主義」の解消と指摘する声が多い。日本は店舗網やATM(現金自動預払機)が整備され、現金を手にしやすい環境だ。このままだと、いくらフィンテックの導入が進んでも肝心の決済が現金中心では、サービスが拡大しない。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの廉享(かどさとる)主席研究員は「現金の魅力は『匿名性』。履歴がつかないからだ。これだけ高額紙幣が流通する国は日本だけ。フィンテックの普及には障害となる可能性もある」と分析している。

 実際、2015年の主要国通貨流通量の対国内総生産(GDP)比率を見比べると、米国、英国ともに10%に満たない水準だが、日本は18.61%と突出。通貨流通量に占める最高額紙幣の比率も日本は88%と圧倒的に高い。